研究船「白鳳丸(はくほうまる)」厨房見学

 

2022-12-10

 

学術研究船「白鳳丸」は、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有する約4,000トンの大型研究船です。かつては東京大学海洋研究所の船だったため、シンボルの青い煙突には今も東京大学のイチョウのマークと「T」の文字があしらわれています。

 

この度、12/2仙台港→12/8横須賀港の7日間の航海に乗船し、その間に普段あまり知ることのない船の厨房の様子を見せていただきました!

 

衛生管理のため厨房内は原則として司厨部員以外は立ち入り禁止ですが、「入口の消毒マットあたりならいいですよ」という司厨長さんの許可をいただいて撮影などさせていただきました

 

お邪魔したのは12/5の夕食の準備時間。メインメニューはカレイの唐揚げと酢豚です。カレイに小麦粉をふっているのが司厨長の林さん。

酢豚の肉を揚げているのが次長さん。白鳳丸の司厨部は基本5人が1チームとなり各航海を運行しているそうです。

 

コンロは全てIHでした。しばらく前に研究船の厨房から火災が起きたのをきっかけに、ガス火から電熱器やIHに代わったのだそうです。

今日の夕食は全部で41人分。酢豚の肉を揚げ終わると、今度はカレイ41枚を揚げていきます...

揚げ物は次長さん一人で担当。「...ずっと揚げ物されてて、油のにおいで胸やけしないです?」と聞くと「うーん、そうですね...自分では、あんまり揚げ物食べられないです()」とのこと。そうでしょうねぇ...揺れる船の中での揚げ物作業、本当にお疲れ様です。

 

小鉢の盛り付けなどを主に担当しているのは、一番最近にこの船の司厨に入った阿部さん。阿部さんは、ここでは新人でも、実は捕鯨船の司厨を7年も務めてきました。捕鯨船は、船員数が多いうえ航海期間も長く、まかない仕事もかなりの重労働だったとか。大変な仕事なのに、どうして船の厨房に?と聞くと、「給料がいいのが一番ですけど...でもそれだけじゃなくて、人と会って話すのが好きなんで、船に乗ってるといろんな人と出会えるのが魅力ですね」とのこと。さらに、将来は?と尋ねると、「お酒がとにかく好きなんで...バーとかできたらいいなと思ってます。居酒屋は...実は親父が居酒屋やってて、親父の作るものがうますぎて敵わないんで、自分は多分やらないです。」と笑顔で答えてくれました。

 

ちなみに阿部さんのお父さんの居酒屋とは、川崎の武蔵新城駅前の「米蔵(よねくら)」だそうです。偶然にも私も川崎育ちなので、そのあたりの様子はよくわかります!いつかきっと訪ねてみよう...

今回驚いたのは、司厨に女性がいたことです。最近は、女性の船員さんも時々見かけるようになりましたが、司厨部員さんは私は初めてお目にかかりました。その紅一点の黒崎さんに、食堂にいても、厨房から黒崎さんの明るい声が聞こえてきて、とてもなごみます、と話すと「そうです?司厨ではいつも、お前はうるさいって言われるんです!なごむなんて言われたの、初めてですよ〜」とニコニコと元気に答えてくれました。もう5年も船の司厨を務めているそうです。これからはどうされるんですか?と尋ねると「うーん、どうしたらいいんでしょうね?私も、どうしたらいいのかなっていつも思ってるんです!もういい歳なんで〜」と笑っておられました。いやいや、本当に明るく元気な、若いお嬢さんです!船の司厨を勤める強さとこの明るさがあれば、どこでも、なんでもできてしまうな〜と感嘆しました。将来は司厨長さんになっているかもしれませんね。楽しみです!

いつも雑談に花を咲かせている「べにすずめ」にくらべて、きっと船の厨房はすごくピリッとしていて、もしかしたらちょっと怖い雰囲気かもしれない...と内心ドキドキしながらお伺いしたのですが、白鳳丸の厨房はとても和やかで、始終冗談が飛び交い笑い声がしていました。阿部さん曰く、「本当に船に依りますね...ここは司厨長さんがほんと優しいんで。自分なんか捕鯨船で、何日も、ひとっことも喋って貰えなかったこともありましたよ〜」...ひえ〜、やはりそういう厨房もあるんですね()。でも、楽しく和やかに作ってもらった食事の方が、食べる方もやっぱり嬉しいです!

 夕食は520分からですが、その30分前にはもう準備が整い、料理はいつでも温かく提供できるように保温し、調理台やコンロの掃除、ダスターの洗濯などの片付けが始まっていました。「船員さんは、5時にはもうぼちぼち来られるんで。その頃までには準備終えるようにしてます。」船員さんも研究者も作業の区切りがあるので、夕食の時刻に大きく遅れてくることもありますが、そういう都合にもいつも笑顔で対応してくれて、本当に感謝です。

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司厨の仕事は毎朝520分から。朝は朝食の支度に加えて、昼食や夕食の下ごしらえなどもあり忙しいようです。お仕事中にお邪魔して、写真も撮らせていただいて、本当にありがとうございました。これからもおいしいご飯を、よろしくお願いします!

その日の晩、司厨長さんが貸してくれた炊飯器やボール、しゃもじを使って、夜食のおむすびを作りました。もちろんお米は登米産ササニシキ!持ち込んだ2升のお米で作った約60個のおむすびは、夜間当番の船員さん、研究者さんにぺろっと食べていただけました。次回仙台港に入港の際は是非お店にも来ていただきたいです(笑)!